都会の早朝。
今日の始まりが早い人たちの中に、
昨日がまだ終わってない人が入り混じっている時間。
これからどこかへ行くのかはたまた帰ってきたところなのか、大きなスーツケースを転がしながら歩く人。
誰かを待っているのか何かを調べているのか、建物の壁にもたれるようにして立っている人。
道にはまだ夜の残骸が散らばっている。
そこを開店前のお店のおばさんがさっさと掃除をしている。
その前を足速に通り過ぎる人たち。
その後ろで、重い体をこっそり引きずるようにして歩く私。
私が一歩一歩進むたびに、私の歩みは次第と街並みにまぎれていって、そのうち周りと同じテンポにたどり着く。
この景色に馴染めないくせに、何でもない顔をしてすっと溶け込んでしまうなんて、そんな気色の悪いことにももう慣れてしまった。
ビルの窓ガラスが陽の光を反射する。
陽に照らされた1枚1枚のガラスたちは、私が歩くたびにいろんな青を見せてくる。
透明のようで濁っているようで、
空の色と重なって、いつかの海の色と同じになって。
眩しさに手をかざそうとしたとき、ふっと景色が滲む。
寂しさに溺れて、つい心の穴を埋めてしまったとかよく言うけれど、そんなつもりは全くない。
ただ、誰のものでもない自分を守る理由がなくなってしまっただけ。それだけ。
痛い目見て初めて、それは痛かったんだと気づいて、君は足枷でもあり、盾でもあったんだと気づく。
最初の痛みなんて意外とすぐに忘れてしまって、きっとまたすぐに同じ痛みを味わうんだって。
そうやって何度も自分を傷つける。こんなことを何度繰り返すのだろう。
これからは、1人きりで自分を守ってあげなきゃいけないなんて、今の私には到底無理な話。