はじめのいっぽ

自分の心と向き合う、はじめのいっぽ。

『また、同じ夢を見ていた』

大好きな幼馴染にもらった小説を読みました。私に向けて選んでくれた本。猫が好きな私にぴったりなお話。

 

たくさん考えさせられて感じさせられて、愛おしくてたくさん泣いてしまった。

 

 

『また、同じ夢を見ていた』/ 住野よる

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本が好きな小学生の女の子が主人公で、彼女の独り言をずっと聞いているようなお話。私もきっとこんな小学生だったよなと思い出した。いつも頭の中に本の世界が広がっていて、現実で目に見える景色もお話の中の世界のように見えて。道を歩いてる猫や、雨の日のカエルや、川沿いの堤防全てに物語が見えていた。こんな風に世界が見えていたよなって思い出して可愛いなって自分で思って、そして、純粋でまっすぐな女の子だったのに、いつからこんな捻くれた大人になってしまったんだろうと切なくなる。

 

 

主人公は少しませた子だけれど、まっすぐで濁りがなくて、分からないこともいっぱいあって、それをいっぱい考えるけれど、結局少しだけ分かったり分からないままだったりする。でも「そういうことあるよね」なんて、分からないものを分かったような口調で適当に流してしまう言葉は使わない。自分の狭い世界で知らなかった出会いや考え方に、ちゃんと知らない分からない、そんなことあるの、なんでそうなるのって言えて信頼できる大人に聞ける女の子。

 

 

そんな姿がとても可愛いんだけど、小学生目線のお話だから、誤魔化しが効かなくて、辛い思いや言葉にできない苦しい思いが、どーんと心に直に響いてくる。私や、大人たちが触れずに避けて来てしまっている、人と人の間の濁った空気を、どうにか乗り越えようともがいたり、真正面から向き合っていく姿が、健気で眩しくて、そしてブーメランのように刺さってきて。その空気は私もとてもよく知っていることなのに、自分はそこから逃げ続けていることを突きつけられたような気持ちになって。逃げるのも別に悪いことじゃなくて、大人のその生き方も間違っていないのに、それでも泣けてしまうのはやっぱり私に後ろめたい気持ちがあるからなのかな。

 

 

彼女が、幸せとは何かについていろんな人に聞いて考えていくシーンがあるんだけど、その時にある人から言われた、「幸せとは誰かのことを真剣に考えられるということだ」という言葉がとても好き。しかも、その言葉を受けたとき、主人公はちょうどクラスメイトのことをたくさん考えて、でも関係性がうまくいかないという時だったから、結果じゃなくて誰かのことを考えられるその過程が幸せだっていう考え方はすごく素敵だし、救われるなと思った。いろんな幸せの形が出てくるけど、この考えが一番私には刺さったしいいなと思ったな。

 

 

お話の途中から不思議なことが起き始めて、だんだんファンタジーにもなっていくんだけれど、それが読み進めていくうちに分かっていくこと自体も面白いし、それでも小学生の目線だからその不思議な体験もなんだか違和感なく描かれていくのがとても好き。夢か、魔法か、嘘か、結局わからないんだけれども、それでもいいんだ。そんな不思議な出来事が、女の子を強くしてくれるっていう経験自体は事実で、私にもあったかもって思わせてくれる。

 

 

 

ずっと甘いものだけが好きでいれるのってとても素敵なことだって私もそう思う。本当ならずっとそうやって生きていきたい。

でも苦いコーヒーやビールが大好きな大人も、それはそれでかっこよくて悪くないことだっていうことも今の私は知っている。苦いものが好きな大人だってそれは立派に素敵なことなんだって、ちゃんとそのことも分かっているし、言い聞かせているけれど。

 

 

でもやっぱり、ほんの少し、あの頃みたいな世界の見え方が羨ましくも思った。甘いものだけが好きなあの生き方を思い出して、あんな世界の見え方をもう一度経験したくなった。

 

それは、私の元にもあの子が会いに来てくれたような感覚で。それは寂しくて切なくて、でも絶望じゃない。私もあの頃の自分にきちんと顔向けできるように、胸張って生きていきたいなあ、と思いました。

 

 

最後まで読んで、ほっと安心させてくれる読了感もたまらない。よかった、、、ってしみじみ余韻に浸れるような。それはきっとこの結末しかありえないからだと思うんです。

 

 

 

いい作品に出会えました。これは繰り返し読みたい本。満足。ほくほくした気持ち。

これをチョイスしてくれた幼馴染がさすがすぎるね。

 

読んでくれてありがとうございました。