はじめのいっぽ

自分の心と向き合う、はじめのいっぽ。

[自作]短編詩エッセイ

呪い。

台所の、真っ黒な排水口を掃除した。今日の仕事終わりは、なんだか機嫌がよかったから。 帰ってすぐ洗濯物も回したし、お風呂の排水口まで綺麗にした。今日は天気がよくて暖かくて、残業もあまりしなくて、だから今日急に思い立ってしまった。 君の使ったお…

お別れ。

引っ越しの時に大きめのぬいぐるみを3体、処分した。 小さい毛布にくるんだり、しっかりした袋に入れたりしてなんとなく外からあんまり見えないようにして、燃えるゴミに出した。 自分で5年くらい前に買ったやつと、元彼にもらったやつと、元々彼にもらった…

この季節の、この時間の、外の匂いはあの街と同じ。 いつも曇っていて、最後まで好きになれなかった街。 田舎のこの時間は人の気配なんてとっくに消えて、でも澄み切っているわけでもなく、昼間の太陽がまだ残った、土と草の濁った匂いがする。 田んぼ道の真…

居酒屋での出会い。

休日の夜。 カウンターで1人、ビールを飲む。 「カウンターあります。おひとり様大歓迎!」の文字に誘われて、思い切って階段を上って入ってみた。 L字のカウンター席にテーブル席が4つくらい。お客さんはまばらで、カウンターの反対側では男女の2人組と店…

抜け殻。

なんかもうだめだ。 やりたいからやるとか、楽しいからやるとか、結局上辺だけの綺麗ごと。 あの場では確かにああ言ったし、あの時の言葉に嘘は無かったと思うんだけれど。 あれは自分自身にそう思い込ませて言い聞かせていたようで、今では全く素直にそう思…

共感なんていらない

都会の早朝。 今日の始まりが早い人たちの中に、 昨日がまだ終わってない人が入り混じっている時間。 これからどこかへ行くのかはたまた帰ってきたところなのか、大きなスーツケースを転がしながら歩く人。 誰かを待っているのか何かを調べているのか、建物…

私とごはん

駅から出て目の前の交差点をすぐ右に曲がる。しばらく歩いて坂道を下り、すぐにまた坂を上って、住宅街を抜けていく。懐かしい気持ちに浸りながら、いつも通っていたこの道を歩いていた。あの頃から、街並みも風の匂いも子供たちの笑い声も、何も変わってい…

飲みすぎた。朦朧とする頭でぼんやり考える。今何時だ。ここはどこだろう。 うっすらと目を開けて半分だけ体を起こす。カーテンの隙間からほんの少し光が漏れていて、車のヘッドライトが薄暗い部屋をぐるりとなぞっていくのが見えた。隣を見ると規則正しい寝…